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【財オタ深堀メモ】未来に向かって遺すものを探そう

 
 
 
今回の財オタ
元福岡市
今村 寛 さん
財政課長時代から職場や立場を超えた対話の場づくりを推進。全国各地で自治体職員や市民向け講座を開催し、退職後も自治体の内外をつなぐ対話の伝道師として活躍中。

私が研修素材として提供している対話型自治体経営シミュレーションゲーム「SIMULATION2035」をご存じでしょうか。
仮想自治体の幹部となって「新しいことを始めるために既存事業を見直す」ということを繰り返してまちづくりを行う体験の中から、財政制約の下での自治体運営の要諦を学ぶロールプレイングゲームです。
先日、たまたま参加者全員が自治体の「財政課」職員だったときのこと。
彼ら全員が2時間のゲーム終了後、こう漏らしました。
「たくさんの事業を削減し、終わったあとに振り返ってみると、あれもこれも削ってしまい何も残っていないと感じた。これで良いまちになったとは思えない。」
私は自分が財政課の係長時代に毎日ただひたすら事業費を削る査定マシンだったころを思い出し慄然としたのです。
 
現場からの「要るものは要る」と財政課の「ない袖は振れない」という主張は永遠に交わることのない平行線。
財政課はただやみくもに削るだけ。
何が大事か、何を実現しようとしているのか、など議論したこともなく、ただ忙しいだけ、ただ予算を切り込むだけに明け暮れ、何を実現できたのかという手ごたえの感じられない徒労感。
今回、「良いまちができた」という感想を持つことができなかった受講者たちは、まさに財政課での仕事の中で同じ思いをしているのでしょう。
市政の要である財政課に配属されながら、やっているのは削減すること、抑制すること、否定することの繰り返し。
現場から、議会から、市民からの突き上げにも対抗できる理論武装で弁は立つようになりますが、これでは楽しいはずがありません。
 
研修でこのゲームが終わった後に私が必ずお話しするのは、予算編成は「削る」ことではなく「残す」ことだということ。
厳しい財政制約の中ですべての事業に十分に予算を計上することができない以上、要求金額を査定で削り、確保可能な財源の範囲内に収めることは必要ですが、それは要らないものを探して個々の事業を「削る」作業ではなく、本当に必要なものを探してその予算を計上するためにそれよりも優先順位の低い施策、事業、経費を精査する、つまり必要なものを「残す」作業なのです。
何を削るか、ではなく、何を残すか。
選んだものが、まちの未来を創り、それが未来の市民に向けて「遺す」贈り物になります。
この目的を見失い、予算査定に費やす膨大な時間が無為にならぬよう、心して臨みましょうね。