🟩

特集 財政課職員って残業多くない?

 
一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会(以下「本研究会」とする)は、財政課の皆さんの業務工数削減について、研究をスタートさせたいと考え、昨年9月に研究会会員にご協力いただき、財政課職員の残業時間調査を実施した。
その調査結果をもとに、今回は財政課の残業時間に焦点を当て、財政課職員の働き方について考える。
 

予算編成のスケジュールは?

自治体は、限りある財源の中で、より効果的・効率的な予算を組み、地域活性化の成果を上げるため、企業・住民団体・一般市民等の声に耳を傾け、地域一体となって効果的な事業を計画し予算編成を行う必要がある。
また昨今では、住民ニーズの多様化・複雑化への対応や、災害復旧・減災対策事業への注力が求められるなど、より幅広い分野の事業を検討しつつ、選択と集中のバランスをいかにうまくとるかが求められている。
このような状況下においては、各自治体の予算編成過程で従来以上に職員の“判断力”が求められているとも考えられる。
各自治体財政課の残業時間についてお話しする前に、まずは財政課のメインともいえる予算編成業務について、どのようなスケジュールで進めているのか確認する。
本研究会の協賛企業であるWiseVine(ワイズバイン)社が令和元年10月に実施した「全国地方自治体の予算編成スケジュールに関する統計調査」を見てみよう。
本調査は、地方自治法第1条の3に規定する普通地方公共団体(同条第2項)都道府県・市町村ならびに特別地方公共団体(同条第3項)のうちの特別区、合計1625の自治体を調査対象とし ている。
 

要求書作成開始が最も早いのは特別区、遅いのは人口規模の小さい町村

調査の回答結果をもとに、自治体区分ごとの平均的な予算編成スケジュールを可視化したものが【図表1】である。
 
 
注) 図表1は、調査への回答時期(上旬・下旬、月末、具体的な日付など)を数値化したうえで平均値を算出し、自治体区分ごとの平均的スケジュールを可視化したもの。上:上旬(1~10日)、中:中旬(11~20日)、下:下旬(21~31日)。
注) 図表1は、調査への回答時期(上旬・下旬、月末、具体的な日付など)を数値化したうえで平均値を算出し、自治体区分ごとの平均的スケジュールを可視化したもの。上:上旬(1~10日)、中:中旬(11~20日)、下:下旬(21~31日)。
これをみると、「各課・各局要求書作成」の開始時期が最も早いのは特別区(23区)(平均: 9月中旬)、最も遅いのは人口規模の小さい町村(平均:11月上旬)、それ以外は平均的には10月上旬~10月中旬に要求書作成が開始されるという実態が明らかとなった。 人口規模が大きく予算規模が大きい自治体や、事業数が多い自治体ほど、より早い段階から要求書作成を行わないと、3月の議決に間に合わないという実態が垣間見えたと言える。
 

規模が大きい自治体ほど査定期間は長い傾向で、2か月以上かかることも

また、各工程の所要期間(平均値)を集計した結果が【図表2】である。
注) 図表2は、調査への回答時期(上旬・下旬、月末、具体的な日付など)を数値化したうえで、各工程の開始時期と終了時期の差分を便宜的に所要期間とみなし自治体区分ごとに平均値を算出したもの。
注) 図表2は、調査への回答時期(上旬・下旬、月末、具体的な日付など)を数値化したうえで、各工程の開始時期と終了時期の差分を便宜的に所要期間とみなし自治体区分ごとに平均値を算出したもの。
 
これをみると、全体平均として、「要求書作成」は約1か月(平均:29.1日)、「財政課査定」は約1か月(平均:29.5日)、「首長査定」は約10日(平均:10.2日)かかっていることが明らかとなった。
また自治体区分別にみると、「要求書作成」の期間は、いずれも約1か月と差はみられなかった一方で、査定の所要期間は差がみられた。 たとえば指定都市では、「財政課査定」が全体平均よりも20日以上長く、特別区では「財政課査定」で全体平均よりも20日以上、「首長査定」で全体平均よりも10日以上長くかかっているとの計算結果が得られた。 逆に「町村」では、財政課査定と首長査定を一体で行っているとの回答も多くみられ、査定の所要時間は短い傾向であることも明らかとなった。
 

財政課職員の月平均残業時間は、地方公務員全体と比較すると、約2倍という結果に

実際、財政課職員の残業時間は、他部署と比べて多いのか。それとも、まさかとは思うが、短いなんてことがあるのかを比較してみた。
地方公務員の残業時間について初めて総務省が平成26年、平成27年に調査した「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果」より、地方公務員全体の残業状況を紹介する。 本調査は都道府県と指定都市、指定都市以外の県庁所在市(東京都は新宿区)の99自治体を対象に実施したものである。 調査結果としては、対象自治体全体の月平均残業時間が13.2時間、年間平均残業時間が158.4時間であった。
続いて、財政課職員のみに焦点を当てた残業時間について確認しよう。 令和4年9月に当研究会会員である40自治体にご協力いただき、「残業時間調査アンケート」を実施した。 令和3年度の残業時間を対象とし、調査結果としては、月平均残業時間が27.9時間、年間平均残業時間が334.4時間とであった。
調査対象や時期が異なることから参考値ではあるが、「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果」における地方公務員全体の残業時間と比べると、財政課職員の残業時間は約2倍という結果になった。総務省と本研究会の調査結果を比較したのが【図表3】となる。
 
 
いずれの月を比較しても、財政課の残業時間が地方公務員全体の平均残業時間を下回ることはない。 財政課に最も求められる能力は、タフさといっても過言ではないかもしれない。
また、「残業時間調査アンケート」の結果からは、査定時期に月198時間の残業をする職員がいる一方で、残業なしの職員もおり、財政課内でも大きく差が開いていることが分かった。【図表4】
 
 

おわりに

財政課職員の残業時間特集はいかがでしたでしょうか。
今回の特集を読まれた方で「ほとんど残業してないよ」という自治体がありましたら、ぜひ取材させてください。 逆に、月の残業時間が200時間超えたというブラックな職場で勤務されている方がいましたら、こっそり教えてください。 その他、「私の自治体では、残業を抑えるためにこんな取組やってるよ」又は「残業を減らしたいけどこんな課題がある」といった情報提供もお待ちしています。
どの自治体も共通の課題を持っています。 残業の多さは、財政課職員共通の悩みです。
本研究会は、これまで自治体独自、あるいは職員独自の経験に頼っていた予算編成業務等のノウハウを暗黙知から形式知に変え、全国の自治体に共有しようと考えています。
それにより、財政課業務が効率化、合理化され、残業時間が減り、よりクリエイティブな業務に向き合う時間が増えれば幸いです。