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決算情報、どこまで公表するべき?
日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。
元愛媛県砥部町役場職員として税部門、会計部門、財政部門と、長く会計に関わってきた会計のスペシャリストの田中 弘樹(たなか・ひろき)さんに回答いただきました。
私は今年の3月まで公務員として働いていました。退職した今でも、自治体の財務情報をどうすれば住民に上手に伝えていけるかを考え続けています。これはもう私のライフワークになっているかもしれません。さて、今回2つの質問を頂きました。私が財政担当だったときの経験を紹介することで、質問への回答とさせて頂ければと思います。
Q 決算が議会で認定されました。任意の決算資料を追加して公表、説明する必要はありますか。
平成18年の人事異動で私は公会計業務を経験することとなり、担当としてまず財務諸表を作成、加えて資産台帳の作成も同時に進めました。なぜかと言いますと、施設や事業単位で資産データを整備したセグメント財務諸表を作り、住民に向けて公開したいと思ったからです。施設別事業別の財務諸表ができれば、セグメント単位の情報開示はもとより、個々の評価・分析、上位施策への貢献度を測定する土台となります。さらには、施設や事業の統廃合の検討をする際の的確な判断、住民の理解を得るための根拠にもなります。
実際、資産台帳を整備していく上で、改めて重要な課題だと認識したのが公共施設の更新問題でした。そのため、それらを織り込んだ中長期財政見通し、施設カルテなど、資産管理系の資料も公表していきました。
組織として、何を伝えたいかが鮮明になれば、どんな資料をつくって公表するか、おのずと見えてくるのではないかと思います。
今後は、いずれかの施設や事業を諦める選択をする日が来るかもしれません。そのとき、エビデンスを持ってきちんと判断、説明できる体制づくりが大切です
Q 財政状況に余裕がないことを分かりやすく伝えるポイントはありますか?
公会計を進めていく上で最も苦労したのは、まちの財務状況を住民に「伝える」事でした。データをただホームページで公開するだけでは不十分と感じ、1年半にわたり広報紙でまちの財政状況を伝えたほか、ホームページでは、部署を超えた財務情報を1つにまとめ順序よく配置することで、上から順番に読んでいけば理解しやすいように工夫しました。
また、定期的に学生や住民と公務員が一緒になって、施設別財務諸表を片手に公共施設を巡ったり、参加者が架空のまちの幹部職員となって、自由に使えるお金が減少する中でどの事業から諦めるかを考える「まちづくりシミュレーションゲーム」を実施したりと、体験を通じてみんなで楽しく学びました。
〝みなさんが担当として伝えたいと思うことはどんなことですか?〟組織それぞれ状況が違うと思います。何が正解かは私にも分かりませんが、この投稿が何かの参考になれば幸いです。
回答者
財ラボ事務局
田中 弘樹(たなか・ひろき)
公務員や学生などで勉強会を開催するグループ「ワンエヒメ」の管理者。
元愛媛県砥部町役場職員として税部門、会計部門、財政部門と、長く会計に関わってきた会計のスペシャリスト。
平成20年総務省「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」委員に抜擢される。
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