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歳入減と向き合い、新たな産業構造を創る取組み
「財ラボ会員がイマ考えていること」を聞く「財ラボリレートーク」。
今回は、宮崎県都農町の取り組みについて坂田広亮町長、都農町財政課の黒木教介さん、財津拓実さんからお話を伺いました。【聞き手 代表理事・定野司】
熱くインタビューに応じてくださった坂田町長(写真中央)。財ラボvol.9(2024年6月号)掲載の目黒区様のインタビュー記事について「感動した」と力説する黒木さん(写真右)。
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歳入減と向き合い、新たな産業構造を創る取組み
現在のまちの課題はどういったところでしょうか。
令和3年まではふるさと納税の恩恵を受けていましたが、令和4年にふるさと納税制度の対象自治体としての指定が取り消しとなった結果、歳入が大幅に減りました。再指定を受けた今は、応援していただける事業をしっかりやって、全国の皆様からのご支援を町民へ還元し、何に使われたのかをお見せしていくことが大事だと考えています。都農町は、そういった問題があったため、現在大きな局面を迎えていますが、他自治体の皆様にも現状を知っていただき、制度がなくなった場合の自治体運営を考えるにあたって参考にしていただければと思っています。
ふるさと納税によって増えた歳入により、子ども医療費の無償化などに新たに取り組まれたと伺いました。経常的な経費は歳入が落ち込んでも止める判断は難しく、その他事業を抑制することに迫られますが、どう対応されましたか。
削減対象とする事業を選定しようとするのですが、実際はどの事業も目的自体は筋が通っていてなかなか削れないですね。一方で、事業執行の方法は精査できると考えています。また、宮崎大学の協力を得て、地域内の産業間でお金が循環するような産業構造の転換について協議しています。例えば、原材料を仕入れる際に、地域内の産業同士が取引関係を数パーセントでも強めることができれば、地域内に残るお金を増やしていけるのではないかという話です。さらに町の資源や町そのもののプロモーションやブランディングとの向き合い方についても学ぶなど、財政の危機的状況を理解してもらうこととセットで、経済的視点を用いた自治体経営のための職員研修を実施しているところです。
基金が枯渇しないうちに、再生策を考えないといけないですね。例えば、令和7年度予算編成方針ではどんなことを主軸に置かれていますか。
あえて、重点事業や主軸になる産業については示しておらず、何割カットっていうのも示していません。まずは原課の皆さんで考えてくださいって話をしています。ふるさと納税が躍進する前の平成26年度と現在を比較すると、標準財政規模は7億円しか増えていないにもかかわらず、予算規模は40億円も増えています。様々な要因が考えられるものの、ちょっと予算規模が伸び過ぎではと考えています。これらを踏まえ、やはり見直すべき事業、経費はあるはずだよと投げかけていて、原課から出揃った時点で削減の検討に進むつもりです。最初から財政課がカットしてしまうと、考えることをやめてしまう恐れがあるためです。
最後に、黒木さん個人として今後取り組みたいことがあれば教えてください。
現在、事業成果を評価するのは、実質的に財政課査定のみに留まっています。それでは、都農町全体の事業の実態が把握しきれません。過去のインタビュー記事にあった目黒区の取組を参考にして、財政部門だけでなく他部署も巻き込んで多方からチェックする体制づくりを進められたらと思っています。