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予算や財政状況の見える化によるメリットとは

日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。 今回は総務省地方公会計の推進に関する研究会委員や「横浜市財政見える化ダッシュボード」の開発などに携わった横浜市・安住秀子(あずみ・ひでこ)さんに回答いただきました。
 

Q 予算の公表はしていますが、どんな事業を実施するかが主眼になり、財政状況を適切に伝えられていないように感じています。

時間と労力をかけた予算査定の集大成が予算の公表です。ですから、住民に財政状況を知ってもらいたいとの気持ち、よく分かります。私も「財政が厳しい中で、必要な施策・事業のために、どう財源を生み出してきたか」を予算資料に目一杯書き込みたいタイプでした。
しかし、住民・議会の関心は、どんな事業が実施されるかに尽きます。だから多くの自治体で、首長の予算プレゼンは、新規・重点事業のアピールが中心となります。
以前、大学生と予算の見える化について意見交換しました。彼らから「自分の生活と行政の関わりといった身近なことが知りたい。そこから財政状況のような大きな話にも関心が向く。いきなり財政と言われてもピンとこない。」と言われました。そこではじめた発信が、市民生活に直結する行政サービスでの税金の使われ方です。身近な予算の発信を通じて自治体運営に対する市民理解・信頼を得ることは、財政状況を適切に伝える前段階の大切なプロセスです。

Q 実際に「見える化」したことによる庁内や住民からの反応、そこから生まれた新たな展開や課題があれば教えてください。

税金の使い道の発信は、身近な行政サービスに焦点を当て、その他の事業は子育て、教育、防災といった行政分野ごとに関連事業の概要や予算額推移等を掲載した「財政見える化ダッシュボード」をウェブ上で公開し、市民の関心に応じた検索ができるようにしました。
ダッシュボードには、個々の事業だけでなく、2065年度までの長期財政推計も掲載しています。長期財政推計は、2020年にはじめて公表し、将来の収支不足額のインパクトから、当時は新聞に取り上げられ、議会の質疑でもよく使われました。
その後、施策の推進と持続可能な財政運営の両立の基本的な考え方、収支不足解消のアクションプランなどをまとめた「財政ビジョン」を作り、2022年に議決しました。
財政状況の見える化により、市民・議会と行政で持続可能な財政運営に対する建設的な議論が交わされるなかで、財政ビジョンが生まれ、これを三者が一緒になって実践する土台の形成につながりました。見える化は潤滑油です。
横浜市ワンストップ財政情報(マニュアルレポート)はこちら
 

回答者

財オタ・横浜市
安住秀子さん
総務省地方公会計の推進に関する研究会委員や「横浜市財政見える化ダッシュボード」の開発などに携わる。2022年『財政課も思わず納得!公務員の予算要求術』(学陽書房)を出版。
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