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特集 ChangeをChanceに
今年は4年に一度の統一地方選挙で、多くの自治体に新しい風が吹き込まれる変化の年。変化(Change)のGをCにすると「Chance」になる。「GをCに変えるには『Taboo』(禁忌)のTを取ろう」という言葉もあるが、今年は因習や旧弊を捨てる
チャンスの年ではないだろうか。 そこで今回は、自治体財政のTabooを取ってChanceをもたらす6つのマインドを紹介する。
① Critical Thinking
先の見えないVUCA(ブーカ)の時代では常識や先入観に囚われず「なぜ」「どうして」「本当なのか」「自分の認識は間違っているかもしれない」という意識を持って考える Critical Thinking(クリティカルシンキング。批判的思考)が求められる。
批判の対象は他人でも、既存のシステムでも、社会でもなく、自分自身。
そして、転入してきた職員の声に耳を傾けてほしい。
財政問題では彼らが一番クリティカルだからだ。そして、役所の常識から一番遠く、社会の常識に一番近い新採は貴重な存在である。
② 原課の思考を動かす
財政課の「金が無い」という言葉は、原課の職員を思考停止にするばかりか「財政課が予算を切った」と仕事をしない理由にされてしまうことさえある。
そこで「金」というキャップ(呪縛)を外してみる。
事業遂行に必要なのは金だけではない。
人、物、情報、時間など金と同等以上の力を生むリソースがないか考える(これぞまさにCritical Thinkingである)。
「金が無い」を「これがある」に変え、原課の思考を促してほしい。
これができるのは財政課の職員だけだ。
どうしても金が必要な時は調達方法を考える。財源は税金だけか?「現在」の金だけか?現金だけか?
もし、何もかもを金で解決できれば、それは「楽」かもしれないが知恵も工夫も必要なくなり「楽しい」こともなくなってしまうのではないだろうか。
③ 対等に対話する
幼稚園・保育園から大学まで詰め込み型が主流だった日本の教育だが、企業、政府、社会の要請により学習指導要領が改訂され「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)に変わりつつある。
ここで重要なのは「主体的」と「深い学び」の間にある「対話」だ。
これまで私たちは「対話」を避けてきた。「対話」を体系的に学ぶこともなかった。
「空気を読め」とは、まさに「対話」を避けるための方便だ。対話を飛ばして議論し、白黒つけて決断し、実行に移す。問題は一時的に解決するかもしれないが、不満は残り人間関係は崩れる。
「対話」は互いの立場と意見の違いを深堀りするものであり、対話によって考え方が変わり、建設的な意見が生まれてくることもある。
結論を求め、議論し、説得されるのではなく、対話によって共感と納得を得るのである。
「対話」が成立する条件に「対等」がある。立場が上の人、声が大きい人、予算を握っている人は対話に有利になってしまうので、財政課が権限を手放さないと対話は成立しない。「金」のキャップを外すのは、このためなのである。
「今日は結論を出さなくていい。皆さんの本音が知りたい」といった対等な姿勢が求められているだろう。
④ 正しいエリート意識を持つ
財政課は自他ともに認める頭脳集団(エリート)だ。
現場から異動した人は現場での経験を買われてのことだろう。あなたの活躍を見ていた人がいる。
誰にも解決できそうもない問題や、誰も手を出したくない問題に直面したとき「私には解けない」と逃げるのはエリートに非ず。
正しいエリートは「私に解けない問題はない」と考え、挑戦する。
ただし、財政課は現場の「上」に立つものではない。
「財政課は、原課の職員を呼びつけ、現場のことは何も分からないのに高飛車な態度で、的外れな指摘を繰り返す。無知で傲慢で鼻持ちならない奴らだ」と思われては話が進まない。
「財政課は、私たちの話をよく聞いてくれる。一から説明するのは面倒だけど、時々、私たちが気付かないヒントをくれる。
何より一緒に仕事をしていて楽しい」と信頼され、仕事の楽しさまで実感してもらえたら最高だ。
⑤ 五月病に注意
総務省の調査(21・22年度)によると、警察、消防職員、教員を除く地方公務員で1カ月以上の長期病休者は全体の3.0%だった。
その内訳を見ると、新生物、循環器系の疾患、消化器系の疾患によるものが減少しているのに対し、精神及び行動の障害によるものは1.9%となっており、10年前の約1.6倍、15年前の約2.0倍と、ほぼ直線的に増加している(図1)。

民間企業の0・4%、国家公務員の1.5と比べても高率だ。
その主な原因は、職場の人間関係、複雑困難な仕事によるストレスだが、特に「うつ病」に似た症状がGW明けに出ることが多い。
几帳面で真面目、責任感が強く感情を表に出すのを美徳としない人、完璧主義の人が多い地方公務員、中でも財政課の職員は要注意だ。
⑥ レジリエンスでやり過ごす
ゴムボールを指で押すとへこむが、指を離せば元の形に戻る。
この元に戻る力が「レジリエンス」だ。同じストレスを受けても、レジリエンスが低い人は落ち込みやすく、高い人は心が折れにくい。
この違いは先天的なものではなく、様々な経験の中で習得される。
無人島にひとり漂着したロビンソン・クルーソーは「心のバランスシート」(図2)の借方に自分に降りかかるEvil(不幸)を、これに対するGood(幸せ)を貸方に書き出し逆境を乗り越えた。クルーソーは、これを後世に残すためではなく、毎日のように思い悩む自分の心を開放し、悩みを軽くするために書いた。そして「どんな逆境にあっても、必ず自分の心を励ましてくれるものがある」と言っていた。

「柳の枝に雪折れなし」という諺がある。
柳の枝は柔軟で、どんなに雪が降っても折れることはない。
人間の心も同じで、柳のように、しなやかに、やり過ごす柔軟さが身を守る。
もし、あなたやあなたの周りでストレスに悩んでいる人がいたら「心のバランスシート」の作成をお勧めしたい。
そして「しなやかに」変化の波を乗り越えてほしい。