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インフラ・公共建築物の予防保全のための予算確保の難しさ

今回は通算16年間の法規担当の経験も生かし、法制と財政の両面から行財政運営に携わる佐倉市の塩浜克也(しおはま・かつや)さんに回答いただきました。
 

Q 施設老朽化による事故もあり、予防保全のための予算確保の必要性を認識しています。しかし社会保障経費等の義務的経費の増嵩により財政状況が厳しく、インフラ・公共建築物の維持管理に係る予算を縮減せざるを得ません。

多くの自治体で、老朽化した施設の修繕等が一斉に必要な時期を迎えています。しかしながら、財政運営上、すべての施設へ対応を行うことは難しい状況かと思います。
修繕等に関する支出を効率的・効果的に行うためには、中長期的な計画に基づく対処が欠かせません。優先順位の判断に際しては、類似施設を比較の上、緊急性と必要性の視点からの検討が必要です。
財源としては、国庫補助金等のほか、公共施設等適正管理推進事業(長寿命化事業)債など、地方交付税の対象となる地方債も検討してみてはいかがでしょうか。右の地方債では、充当率9割のうち、3割から5割(財政力指数による)が普通交付税の需要額として算定されます。
「壊れるまで使う」は、結果的に支出が大きくなりかねません。優先順位を付けて、予防保全に努めていただけたらと思います。

Q 各組織が保有する施設の改修要望に対し、優先順位を判断するための仕組みがなく困っています。

可能な限り、各組織が保有する施設に関し、情報を一元化できればと思います。各組織に任せてしまうと、効率が良くないだけでなく、必要な修繕も行われない可能性があるからです。なお、私が所属する佐倉市では、同一の目線で修繕に対処ができるよう、施設の包括管理委託を実施しています。
ある程度の規模の工事に関しては、佐倉市では、翌年度予算の編成過程で、営繕部門等の技術系職員と財政課の職員が集まって、横断的に優先順位を検討しています。中長期的な計画に基づいて上がってきた要望でも内容の精査が必要ですし、予算を付けても工事に対応できる役所の人的資源には限りがあるからです。
営繕部門等の技術系職員は、老朽化の程度や危険性の有無などの視点から、財政課の職員は、補助金や地方債の活用可否などの視点から意見を交わします。
その際、照明設備のLED化に活用できる脱炭素化推進事業債のように期間が限定される(令和7年度まで)財源の有無も、優先順位の判断基準になります。LED化は、高騰が著しい光熱費の縮減にも効果的です。
 

回答者

財オタ・佐倉市
塩浜克也さん
民間企業を経て1997年佐倉市入庁。総務部行政管理課等を経て、2022年より財政課長。主な著書に『月別解説で要所をおさえる!原課職員のための自治体財務』(第一法規)。
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