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ビルド&スクラップの実現を目指し枠配分の導入を検討したい!

今回は財政課時代から全国で『出張財政出前講座』を開催し、退職後も、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを推進されている元福岡市・今村寛(いまむら・ひろし)さんに回答いただきました。

Q 一件査定方式では事業の優先順位が付けられず、見直しも進まないため、枠配分制度の導入を検討しています。制度設計や庁内合意形成など課題が多く、どこから手をつけるか悩んでいます。

予算編成における枠配分制度は課題解決のための手法のひとつですから、手法ありきではなく、それが課題解決に資するのかどうかを考えましょう。
財政課から見た予算編成上の課題(事業の優先順位がつけられず見直しが進まない)が現場への権限移譲で解決するのかどうか。財政課での査定を避けたいがために、現場に押し付けていると思われては何にもなりません。また、大前提として枠配分による現場への権限移譲は事業の見直しのためではありません。
枠配分は、市民に近い現場で最適な政策を推進するために裁量を拡大し、担当部門が既存施策を見直して財源を生み出す「ビルド&スクラップ」を自律的に行える仕組みです。
現場が枠配分導入の目的を正しく理解するためには、「財政が厳しい」とはどういうことかを構造的に理解できていなくてはいけません。財政課からの査定を受けなくても新規事業を創出できる自律経営が現場のモチベーションとなるよう、枠配分導入の目的と狙いの理解促進が第一歩となります。

Q 枠対象経費と対象外経費の扱いは、経費の性質などを見て細かく定義するべきでしょうか?

枠配分予算は、各部門への権限移譲を通じて現場のやる気を醸成し、市民にとってよりよい予算編成、執行を実現することで市民満足度の向上を図るものであり、その制度の設計において「こうあらねばならない」という絶対的なものはありません。   枠対象経費の設定やその配分額の積算においては、どのような配分を行うことが、最も各部門の自律経営を促すことが可能か、という視点が重要です。  枠配分が権限の移譲という観点で行われる以上、現場に任せたものは財源を配分したあとは口を出さないというのが原則ですし、重要課題について首長に判断を仰ぐべきことを現場の裁量に任せるというのは無理があります。  また、枠配分予算の積算方法を過度に細かく設定すると、その事前把握や調整に時間がかかり、最終的に目指すべき権限移譲の効果が薄れ、財政課と現場双方での省力化を図りつつ、重要な政策に関する議論に集中するという目的が達成できなくなってしまいます。まずは、ざっくり「首長が判断するもの」か否かで区分してみる、というくらいでいいかもしれません。
 
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回答者

財オタ・元福岡市 今村寛さん
元福岡市職員。財政調整課長時代から、職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを推進。また、全国各地で自治体職員や市民向けに「出張財政出前講座」を開催。退職後も、自治体財政をテーマとした講座などを通じて、自治体の中と外をつなぐ架け橋、対話の伝道師(エバンジェリスト)として活躍中。

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