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旬の財政「官製談合事件」

ある大学の研究者らが入札情報を分析し、昨年2月、56の自治体に対し談合の疑いを指摘した。その結果、A市では職員が官製談合防止法違反容疑で逮捕された。また、B市では談合の有無、調査の実施について市と議会で議論が続いている。放置すれば住民監査請求が行われる可能性もあり、波紋が広がっている。

官製談合防止法

正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」。一般の談合は受注する業者間で行われ、発注する職員が談合を唆したり入札情報を漏らし、その見返りとして金銭の授受や便宜供与を受ければ贈収賄罪(刑法)により罰せられる。これに対し、官製談合防止法の対象は職員に限られ、見返りの有無を問わない

見返りも無いのに、なぜ?

違反した職員は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科せられる。何の見返りもなく懲戒免職や失職を免れないリスクを冒した理由について、多くは次のような理由で談合を正当化しようとする。
  • 地元業者の安定的な受注確保、保護、 育成
  • 優良業者への発注による品質の確保
  • 工期の遅延を防ぐための不調回避
  • 業者からの選定配慮の働きかけ
  • 職員の再就職先の確保

自治体職員の使命

かつて、官製談合は贈収賄と異なり罪の意識が低く、組織的、習慣化されていたところもあった。官製談合防止法施行後もしばらくは罰則がなかったため、抑止力も十分ではなかった。
しかし、自治体が発注する公共事業の財源は税金だ。それが特定の業者にだけ入札の権利が与えられ、入札価格が操作されていたとすれば、これは単なる法律違反ではなく、自治体職員の使命に反する行為である。
恐れるべきは罰則ではなく、住民の信頼を損なうことだ。一度失われた信頼は簡単には回復できない。公正な行政を維持し、住民からの信頼に応え続けることこそ、私たち自治体職員に課せられた使命なのだ。
(了)(財ラボ編集部)