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【相談室】予算要求が過大で困っています…

Q 予算編成方針を示しても、要求が膨らみ続けます。
■ 方針を示しても、意識は揃いにくい
このご相談は、毎年多くの自治体で耳にします。「経常経費の抑制」「既存事業の見直し」「選択と集中」など、各自治体が類似した方針を掲げています。しかし、こうした普遍的な方針であるからこそ、財政課と事業課の意識が揃わなければ、結果として要求が膨らむ構造は変わりません。
■ 全体最適の視点共有
人件費増や物価高騰など「不可避な増額」は削減しにくい上に、歳入や基金の情報が十分に共有されなければ、担当課は全体の制約を実感できないまま要求を積み上げてしまいます。こうした情報の非対称性が過大要求の要因となり、全体最適が図れなくなっています。財政課は、方針を「守ってもらう」だけでなく「どう伝えるか」を意識してみるとよいでしょう。
Q なぜ、要求査定が進まないのでしょうか?
■ 数字だけで判断できない構造
予算査定では「経常・継続的な経費だから仕方ない」「不可避な増額だから削れない」と主張されると、どこまで踏み込めばよいか判断が難しくなります。一方で、単純な削減率や経費区分だけで判断すると、事業課の理解を得るのが難しくなります。実際、経常経費には削減余地が少ないものも多く、結局、廃止にも削減にも承認にも踏み切れず、来年度以降へ先送りなど中途半端な対応となってしまっていないでしょうか。
■ 最終的に減ってしまう財政調整基金
事業評価の結果が予算査定と結びつかず、事業廃止まで議論が進まないケースが多く見られます。KPI設定が事業目的とずれている場合、数字を見ても判断の根拠になりません。査定の場では、そもそも事業廃止まで議論する余裕がないのも実情です。事業評価と予算査定をどう連動させるか、改めて考える視点が大切です。要求の圧縮ができなければ、結果として財政調整基金を取り崩して対応せざるを得ません。目先の対応だけでなく、基金の減少が続く場合は、財政構造そのものの見直しが必要かもしれません。
※誰でも簡単に財政チェックできる指標「財政調整基金」
自治体の財政制度では、地方債(借入)が認められるのは原則として資産形成に限られています。公共施設の耐用年数は50年程度と長い一方、償還期間は原則30年以内と短いため、通常は債務超過に陥ることはありません。したがって、健全性の一次的な確認指標として注視すべきは、財政調整基金と歳計現金の動きです。制度自体が、ここを見ていれば第一段階のチェックが働くように設計されているので、財政の健全性を簡単に把握できます。定期的に住民や議会と情報を共有し、透明性を保つことが大切です。
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回答者

元砥部町
田中洋樹
公務員や学生などで勉強会を開催するグループ「ワンエヒメ」の管理者。税部門、会計部門、財政部門と長く会計に関わってきた会計のスペシャリスト。株式会社ホルグ主催の「地方公務員アワード2017」を受賞し、2019、2020年には同アワードの審査員を務める。2025年、財ラボ事務局長に就任。
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