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財政運営と資金運用

日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。
地方公会計担当職員の意識改革など公会計を活用した財政運営を実行し、令和4年度「今後の地方公会計のあり方に関する研究会」構成員も務めた経験を持つ大東市の川口克仁(かわぐち・かつのり)さんに回答いただきました。

Q 資金繰りや基金運用は会計課が所管していますが、財政課として気にかけておくべきことはありますか。

会計担当課、財政担当課のどちらの所管なのか、自治体によって違いますので、まずは基本原則から。地方財務実務提要によると『会計管理者は、基金に属する現金の出納及び保管を行うものですが、このことは、基金の運用までを会計管理者が行うものではなく、長の決定した運用方針に従い、その命令又は通知等に基づいて現金の出納及び保管を行う(3巻7172頁)』とされています。
これを理解した上で、資金運用の高度化・複雑化に対応するため、会計管理者の権限を拡大する自治体も増えているようですが、会計管理者は年度を超えるような中長期の資金繰りを統制する権限がありません。基金に属する現金の運用について、大きな方針は財政課が責任をもって管理するのが適切だと私は考えています。
資金運用と資金繰りは一体的に行われるものです。現金を債権や有価証券などにするといった運用行為は長の権限と解されますので、財政担当課も積極的に資金計画について関与し、繰替運用や一時借入を適切に行うのが良いと考えます。
いずれが所管するにしても、事務分掌は自治体の歴史や考え方が反映されるものですから、一律に判断するのではなく、関係者でよく話し合って合意を図るのが大切です。
 

Q 長期金利が上昇すると、財政運営や資金調達にどのような影響があるでしょうか。

日銀のマイナス金利政策は2016年1月に導入され、異常とも言える超低金利時代が続きましたが、今年3月にマイナス金利政策が解除されました。日本は「金利のある世界」に転換したと見ています。金利の上昇を、皆さまもひしひしと実感されているかと思います。将来の資金調達や利率見直しに影響がありますので、早期に金利負担の増加リスクを認識して対応すべきです。
まずは元利償還金の抑制です。交付税措置がない起債は出来るだけ抑制する、交付税措置があっても、慎重に事業と起債の必要性について判断しましょう。交付税措置があるならば借金をしても良いという風潮は危険です。交付税制度を理解しているのは概ね財政経験者だけということを念頭に置いて、誤解を生まないよう周知を図りましょう。借入期間は出来るなら短縮する、据え置き期間も出来る限り短縮したいです。
一方で資金運用のチャンスでもあります。債券運用は、途中売却ルールの明確化、基金の一括運用、一般担保付社債を可とするのかの3点が、収益拡大を図るための大きな論点です。債券はこれからだという団体さんは、ここを押さえて、財政担当課と会計担当課で上手に合意を図りながら資金運用を進めましょう。
 

回答者

大東市
川口 克仁(かわぐち・かつのり)
「付箋紙仕訳ゲーム」による地方公会計や複式簿記にかかる庁内理解の促進、職員の複式簿記アレルギーを回避した日々の仕訳の導入、「バランスシート探検隊」による地方公会計担当職員の意識改革など公会計を活用した財政運営を実行。
主に地方公会計の分野で全国市町村国際文化研究所や地方公会計研究センターなどで講師を歴任。
令和4年度「今後の地方公会計のあり方に関する研究会」構成員。
 

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