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相談室 今年こそ、使用料・手数料の見直しを
日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。
今回は補助金や使用料のガイドラインを作成するなど、見直しのためのルール作りを推進した実績がある高岡市の長久洋樹(ながひさ・ひろたか)さんに回答いただきました。
Q 長年見直しがされてこなかったため、やり方がわかりません。まず、方針やガイドラインの作成に着手したいのですが、参考になる資料やアドバイスはありますか。
使用料については、「受益者負担の原則」により判断していくことが基本だということは誰もが認識されていると思いますが、その「受益者の負担の範囲」を客観的に示して、適正額を示すことに頭を悩ますことと思います。
私は「負担を求める受益の範囲の決め方」と「現状と本来求めるべき額との差分の解消ルール」が大きなカギだと思っており、その際、参考とさせていただいたのは『公会計が自治体を変える!Part3-財務データの分析は行政改革の突破口』(宮澤正泰著。2018年1月。第一法規出版)です。また、本市の補助金や使用料も含めた公共施設管理に関するガイドライン作成の取り組みは、令和2年度に(一財)地方自治研究機構様(以下「自治研」とする)との共同研究事業により実施しました。その報告書が『弾力性の高い行財政運営に関する調査研究』として自治研のホームページに掲載されておりますので、そちらもご参考にしていただけたらと思います。
Q 各公共施設等の使用料単価の見直しは、庁内職員も住民もステークホルダーが多く、苦慮しそうです。どのような段取りで準備・説明・周知していくのがよいでしょうか。
まずは、庁内において、使用料を改定する最大の目的を共有することだと思います。将来の施設再編への布石など、増収以外の最終目的があるなら、自ずと見直し作業の質や手法が変わります。また「うちの施設は特別だ」という担当部局があっても、その「特別」が市幹部から見ても妥当なものであれば、その特別扱いに客観性を持たせるようルールを見直すことで、庁内外からの意見にも誠実に対応できるルールになると思います。
住民への周知は、受益者負担の妥当性について丁寧な情報発信に努めることが大事です。その際、使用料を定期的に点検するようにできれば、住民への浸透に加え、時点に応じた柔軟な判断にも有効だと思います。なお、一般財源負担の軽減という点では、コスト減での対応も可能なので、使用料ではなく現行サービスの再点検という選択肢もあります。自主財源である使用料・手数料収入の大幅な確保が最大の目的ではないなら、柔軟な視点から受益者負担のあり方について検討してください。
回答者
高岡市
長久洋樹さん
「高岡市財政健全化緊急プログラム」実行の中心人物。補助金や使用料のガイドラインを作成するなど、見直しのためのルール作りを推進。その結果、同市の収支均衡を計画期間から1年前倒して達成。中小企業診断士の資格も持つ。
NPO法人T.upの副理事長・事務局長。