▪️

相談室 新規事業や重点事業など、政策的経費の査定ポイントは?

日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。
今回は総務省地方公会計の推進に関する研究会委員や「横浜市財政見える化ダッシュボード」の開発などに携わった横浜市・安住秀子(あずみ・ひでこ)さんに回答いただきました。
 

すでに実施の方針は決定し、詳細を予算査定で議論予定です。査定の着眼点は?

本来であれば、方針決定時に、実施の必要性や見込まれる効果は当然のこと、主体、手法、活用財源、今後の財政負担の有無など、一定の整理をしておくことが望ましいです。したがって、日頃から所管部署と良好な関係を築き、事前に情報を入手し、予算編成前の政策判断を行う会議等で議論しておけるよう、所管部署に促すといった前捌きが必要です。
議論できずに予算編成に突入してしまった場合、基本計画等での位置付けと類似事業の有無、実施目的達成までのプロセス(ロジックモデルの活用が考えられます)、見込まれる効果に対する一般財源の投入量の妥当性などをみていきます。
 

Q 財源はどう探せばよいでしょうか。

予算査定のタイミングだけで財源を獲得するのは難しいので、その前段階から可能性を探っておくことがポイントです。
国からの補助金確保では、骨太の方針や各省庁の予算案と整合する事業にチャンスがあります。所管部署には、国の動向にアンテナを張り、その動きを踏まえた事業立案と予算要求をお願いしましょう。また、国への予算・制度要望において、現状と課題・意向をデータに基づいて地道に伝えていくことも将来的な財源確保につながる手段です。
公民連携による施策実現も積極的に考えたいものです。所管部署の意識改革が伴いますが、「行政がやってあげないといけない」とのパターナリズムから、「行政と民間が一緒になって社会課題に取り組む」とのパートナーシップの考えに転換した事業立案により、行政外部からの経営資源活用へとつなげることもできます。
 

Q 一度始めると継続事業となり毎年の一般財源の負担になることを懸念しています。

終期をあらかじめ決めておく必要があります。新規事業等のヒアリングでは、終期を必ず確認しましょう。終期がかなり先になると見込まれる場合でも、3年後、5年後といったタイミングで検証を担保しておくような査定をお勧めします。事業実績や効果のモニタリングは、収集するデータの種類、必要となる指標設定など新規事業等を設計する際に所管部署にきちんと決めてもらいましょう。そして、財政課自身も、事業実施の後追いを怠らずに、検証結果を踏まえて、事業の終了、手法の見直しや転換を促すなど、単年度思考から脱却した査定スタイルへと変革していく必要があります
また、先行事例の無いような事業では、いきなりフルスペックで実施するのではなく、モデル事業として小さくはじめて、その効果を見極めてから、段階的に拡大することで、一般財源の効果的な活用が可能となるものもあります。0か1かの査定ではなく、まずは、お試しを認めるといった査定もあり得ます。
 

回答者

 
横浜市
安住秀子さん
 
総務省地方公会計の推進に関する研究会委員や「横浜市財政見える化ダッシュボード」の開発などに携わる。2022年『財政課も思わず納得!公務員の予算要求術』(学陽書房)を出版。
 

他の相談室の投稿を見る