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旬の財政 「事務事業評価と予算」

 
 
財政の「旬」のキーワードにしたコラム。
 
「問題は予算をいくら使ったかではなく、予算を使って、何がどう良くなったのか、悪くなったのか(悪いままなのか)である」
行政評価の目的は行政活動を従来のP(計画)→D(執行)の繰り返しから、P→D→C(評価)→A(改善)という経営(マネジメント)サイクルを導入することによって、経営改革を進める契機にするものだ。
そこで、活動指標(アウトプット)に加えて、成果指標(アウトカム)の設定が求められた。例えば、防犯パトロールを一日に何回実施したかではなく、防犯パトロールを実施することで犯罪が減ったのか、住民の体感治安は上がったのか、などが解決すべき問題であり、事務事業が施策指標、政策指標の達成につながらなくてはならない。
事務事業評価で重要な要素と言えば、必要性(妥当性)、効率性、有効性の3つだろう。このうち、必要性(妥当性)は当該事務事業が施策指標、政策指標にしっかり紐づいているかどうかであり、その方向が違っていなければ、有効性の有無を判断するのは、それほど難しいことではない。もちろん、方向性の違いはそれぞれの評価の中で正されるべきだ。
問題なのは、方向性が違っている、あるいは方向性が定まっていないにもかかわらず、事務事業が「効率性」だけで評価され、それで満足してしまうことだ。
効率性=成果÷投入したリソース
リソースとは、人、物、金、情報、時間、知的財産、やる気などの総和であるが、ここでは「予算」に単純化してみよう。つまり、予算を使わなければ使わないほど効率性は上がる。これは「最少の経費で最大の効果を挙げる」(地方自治法第2条)という自治体の経営理念とも合致するように見えるが、これでは分子の「成果」を上げることはできない。
自治体の存在意義は「住民の福祉の増進」にある。その「成果」が現状維持でいいはずがない。しかし、事務事業評価の結果を見ると「現状維持」ばかりである。これでは新規事業を入れたくても入れられない。
このように、自治体の経営改革とは予算の効率的な執行だけあってはならない。いかに「成果」を生み出すのかという視点に立って、事務事業を取捨選択することこそ、真の改革だと言えるのではないか。そして、その「成果」を定量化する手法が事務事業評価なのだ。(了)(財ラボ編集部)