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相談室 予算編成を振り返って—来年度に向けての準備と心構え

日々の業務の悩み事に、財政のベテラン「財オタ」がアドバイス。
今回は総合政策部長等を経て、現在は川西市副市長を務める松木茂弘(まつき・しげひろ)さんに回答いただきました。
 

新規・拡充事業の議論に時間を要し、既存事業の見直しの議論ができません…。

既存事業の見直しは大小はあるものの住民への影響は必ずでます。それだけに慎重に時間をかけて行う必要があります。また、首長の政治スタンスが問われる内容になりますので予算編成する年度の春から夏にかけて前年度決算の状況、直近5年間の住民へのサービス効果などを検証して見直し案を作成し、秋には首長の決定を受けるスケジュール感を持つことが必要です。単純に経費を落として効果を高めることができる内容であれば新年度予算案に反映していくことで進めることができますが、サービス水準のカットや廃止が含まれる場合は新年度予算編成作業が本格化する前の11月には、首長案を作成し、次年度の財政見通しとあわせて、事業の見直し案をセットで議会、住民に見せていくことが大切です。議会、住民から反対の声をいただくことも多いですが、最低でもこれぐらいの丁寧さが必要です。
 

スクラップを反映している部署とそうでない部署があり不公平感があります。

スクラップを単に経費削減で捉えるのか、事業の改革、改善で捉えるのかによって違いがでてきます。同じコストでも効果を大きく生むことも費用対効果での成果と捉えることもできます。また、今まであまり絞り込めていなかった部署が大きなスクラップの要求をもってくる場合、毎年度見直しをかけて改善に取り組んできたために削減額が少額になる場合など、当該年度だけで単純な比較はできません。また、所管する事業の予算額の大きさによってスクラップの金額も違ってきます。どちらにしても予算要求時点でスクラップを求めても、さほど大きな効果が期待できない点が悩ましい部分です。その意味では全庁をあげての業務改善、改革の運動を起こすことが大切です。首長の号令で「全事業の再検証」といった名目ですべての事業の聖域のない改善改革運動を起こすような取り組みができるといいのではないかと考えます。
 

Q 組織構成や人材の適正配置について議論できず、課題を感じています。

予算編成は資源を最適配分する手法です。自治体の資源を、人、もの、金をトータルで捉えた予算編成手法に切り替えるべきです。それには二つの要素が必要です。一つは、部署間を超えた情報の共有化です。金は財政担当、人は人事担当、ものは管財担当もしくは所管課ではトータルでの判断ができません。予算⇒執行⇒決算⇒予算、いわゆるPDCAサイクルで情報を共有化する仕組みが必要です。二つには、首長、職員の意識改革です。人の数(人件費)、経費(予算)、資産(減価償却費)を金額で認識して政策形成、政策判断ができる仕組みが必要です。この仕組みが自治体内に出来上がってくると、必然的に人材の適材配置や組織の構成のあり方の見直しにつながってくるものと考えています。
 

回答者

 
 
 
川西市
松木茂弘さん
 
1983年川西市入庁。企画財政課財政課長、総合政策部長等を経て、現在は川西市副市長を務める。著書『自治体財務の12か月』ほか多数。
 

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