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特集 予算編成のDXを考える

 

はじめに

 「自治体DX」は自治体経営において最も注目されるトレンドワードの一つであることに違いない。
 自治体DX関連予算はどの自治体においても重点取組事項に掲げられることが多く、自治体DXに関連する予算要求を査定した経験のある財政課職員は多いのではないだろうか。
 ここで簡単に自治体DX推進の経緯について振り返っておく。
 令和2年12月に、総務省が自治体に向けて自治体DX推進計画を公表した。
 同計画の策定以降、新たに「デジタル田園都市国家構想」を掲げるなど、自治体DXに関連する様々な動きがあり、令和4年6月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」や「デジタル田園都市国家構想基本方針」が閣議決定され、政府としての方針が示された。
 自治体には様々な分野でデジタル技術を活用することにより、豊かで不自由ない生活ができる地方を実現することが期待されている。
 平たく言うと、自治体DXとはデジタル技術を活用し、住民サービスの向上と業務効率化を図ることを目的としているものである。
 本特集では、デジタル技術を利用した財政部門の業務効率化に焦点を当て「予算編成DX」について考察する。
 

予算編成のDXについて

 財政課には情報が集まる。資料がみっちりと綴じられた分厚いチューブファイルが書棚に窮屈そうに押し込まれている光景に見覚えがあるのではないかと思う。
 チューブファイルを探す時間や紙をめくる時間を通算したら、もしかすると財政課職員一人当たり年間で100時間は軽く超えているのではないだろうか。それほどまでに財政課は情報と向き合う時間が長い。
 自治体DXを進めていく過程では、まずはペーパーレスやデジタル化というステップを踏むことが一般的である。これはどの自治体でも取り組んでいることだろう。その中で、他自治体の予算編成のデジタル化の取組状況に興味を持つ方は多いと思われる。
 そこで、令和6年3月に財ラボ編集部(一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会。以下、本会)では全国の自治体に対してアンケート調査を実施し、491自治体から回答が得られた。
本特集ではアンケートの結果から
(1)予算要求資料の形式(2)ヒアリングの方法(3)分析の方法
について取り上げる。
図1 令和6年度予算編成に関するアンケート調査の集計概要
図1 令和6年度予算編成に関するアンケート調査の集計概要

(1)予算要求資料の形式

約77%の自治体が紙提出
 予算要求資料は、特に当初予算においては、全事業の根拠資料が詳細に添付されるため非常にボリューミーになる。そんな予算要求資料をPDFなどのデータで提出してもらっている自治体もあれば、紙で出してもらっている自治体もある。皆さんの自治体ではどのような状況だろうか。今回の調査結果では約77%の自治体が紙での提出となっていることが分かった。一方で、ほとんどの自治体から、予算要求資料等のペーパーレス化・デジタル化の必要性は強く感じているという回答が得られた。予算要求資料等をペーパーレス化・デジタル化していく必要性については、全国の財政課の共通認識であると言えるかもしれない。
 では、どうして約77%もの自治体において紙提出が続いているのだろうか。今回のアンケート調査ではペーパーレス化・デジタル化を進めたくても、多忙によって難しかったり、体制が整っていなかったりで、なかなか推し進められない、という回答が多かった。
 それもそのはずで、財政課職員の月平均残業時間は地方公務員全体の月平均残業時間に比べて約2倍となっており、中には月198時間残業のハードワークをする財政課職員もいるくらいの業務量である(令和元年10月に実施した「全国地方自治体の予算編成スケジュールに関する統計調査」より)。業務の合間を縫ってペーパーレス化・デジタル化を進めることが難しいことにも頷ける。
紙管理は煩わしい?
 紙管理に課題感を感じている自治体も多い。煩わしさを課題としてあげる自治体が多く、原課から修正資料や追加資料が提出された場合に、差替え作業の負担があるとの声が多かった。しかし、これは予算要求資料等をペーパーレス化・デジタル化している自治体においても生じる問題で、紙管理と同様の煩わしさがあるとの声もあった。
紙管理かデータ管理か
 紙管理のほうが効率的ではないかという意見もあった。査定で紙にメモをするので、下手なペーパーレス化・デジタル化はかえって効率性を下げるからである。
 一方で、査定に関してもペーパーレス化・デジタル化を進め、効率的に運用できているという自治体もあった。紙管理のほうが効率的なのか、データ管理のほうが効率的なのかは、見解が分かれるようだ。
 紙管理でもデータ管理でも「必要な時に必要な人が必要な情報に辿り着けるか」がポイントになるのではないだろうか。
 

(2)ヒアリングの方法

約97%の自治体が対面で実施
 財政課は予算要求資料が原課から提出されたら、予算査定に向けて要求内容や前年比でどう変わったのかなどをチェックしていく。このフェーズでは、5W1Hを意識したり、ノイズを消したりするなど、効率的に資料を読み進める必要がある。時間との勝負なのでいかに筋良く情報を吸い上げられるかが重要だ。そして、資料を読み進める中で情報に不足や誤りがあったり、内容に疑問が生じたりするため、原課にヒアリングすることが多いだろう。
 今回のアンケート調査の結果では対面のヒアリングを実施している自治体は474自治体(約97%)であった。現場に赴き、一次情報をキャッチすることはとても大切であるし、担当者と膝を突き合わせて話すことで引き出せる情報もあったりする。対面でのヒアリングを大切にしている自治体が多いことは納得である。
対面のヒアリングは時間がかかる
 対面でのヒアリングは時間がかかるという課題意識を持っている自治体もある。全ての要求内容をヒアリングせずに済むように対象を絞っていても、資料を出し入れしたり、話を深堀りする必要があったりするため、時間がかかる。
 スムーズにヒアリングするために、事前にヒアリングシートを原課に送っておくという取組みをしている自治体もあったので、ヒアリングにかかる時間に課題意識を感じている自治体は、ぜひ参考にしていただきたい。
ヒアリングの記録が残らない
 対面でのヒアリングを大切にしながらも、電話、メール、チャットも駆使しながら、各自治体ともに効率化を図っている。しかし、これらの方法は記録が残りにくいという課題があるとの声も多く、どの自治体においても共通の悩みごとのようだ。
 この課題についてはExcel等で記録を残すような運用をしている自治体もあるようだが、メールやチャットのやり取りの転記が手間となる場合もあるため悩ましいところだ。
 

(3)分析の方法

約76%の自治体がシステムの情報に手を加えている
 財政課は提出された予算要求資料について詳細な分析を行っている。
 査定に向けた分析に限らず、財政課長等や特別職向けの概要資料を作るための分析も多い。分析については、財務会計システムや予算編成システムから出力した帳票に手書きでメモを残したり、出力したCSVデータを加工したりするなど、財務会計システムや予算編成システムの情報に手を加えながら分析する自治体が全体の約76%だった。
 中には分析もすべてシステムで完結させたり、ペーパーレスで完結させたりしている自治体もあったが、全体に占める割合はまだまだ少なかった。
 

おわりに

 今回のアンケート調査では491自治体という非常に多くの自治体から回答をいただくことができ「予算編成のDX」というテーマに課題意識を持っている自治体が多いことが伺える。
 中でも印象的だったのが、ほとんどの自治体でペーパーレス化やデジタル化の必要性を感じているものの、多忙により推進できない点や、紙管理とデジタル管理のどちらが効率的なのか見解が分かれる点である。
 この場を借りて、アンケートにご協力いただいた全ての自治体の皆様に心から感謝申し上げる。今後も引き続き、予算編成のDXについて注目していきたい。
(了)(財ラボ編集部)