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財ラボリレートーク

「財ラボ会員がイマ考えていること」を深掘りする「財ラボリレートーク」。
今回は「ステコミ」を活用した財源確保や事業の見直し・評価など先進的な取り組みをされている広島県府中市財政課の皆さんにお話を伺いました。
                             【聞き手  代表理事・定野司】
 
 
最初に皆さんの経歴を教えていただけますか?
課長の山田は財政課長となり3年目です。 係長の赤木は過去に7年間の財政経験があり、今年度から再び財政課に配属となりました。 歳入確保や事業見直しに取り組んでいます。 同じく係長の谷は過去に3年間管財業務を経験し、今年度から財政課に配属となりました。 今は個別施設計画の策定に取り組んでいます。
 
や財源確保はどのような手法をとっていますか?
令和3年度当初予算までは一件査定を実施していましたが、財政調整基金(以下「財調基金」)を使わないと当初予算を組めない状況にあったことから、令和4年度当初予算から初めて枠配分方式を導入しました。 市長査定では各部長が説明し、責任を部長に持たせる仕組みにしていますが、実際は枠を超えて予算要求する部があります。 突き返す手段もありますが、結局は時間の制約などから、なし崩し的に通してしまっている状態です。財源の確保については、今年度はステアリングコミッティ(以下「ステコミ」)をさらに活用していきたいと考えています。 市長、副市長、CIO、総務部長で構成されており、CIOには元々IT企業の社長を務めていた方に就任いただいています。ステコミのスケジュールは、前年度の重点事業については8月に評価をして翌年度予算に反映し、当該年度の重点事業についても11月に評価し、同じく翌年度予算に反映します。 また、11月のステコミの中で事業見直しにも取り組んでおり、削減目標額としては、事業費及び人件費のフルコストで評価して、一般財源ベースで1億円を設定しています。
 
重点事業の数としてはどれくらいになりますか。
20~30事業になります。重点事業以外にも①総合戦略に掲げる事業②補助金等交付事業③一般財源の活用額が多い事業④各部からの提案事業、を対象として事業見直しを進める予定です。
 
これはかなり見直しが進みそうですね。
事業見直しの視点も示すようにしていて、従前からの➀事業目標は達成しているか②新たな手法を導入できないか、という視点に加えて③人員(マンパワー)を考慮した事業になっているか、という視点も新たに打ち出しました。
 
事業見直しについて、具体的にどんな取り組みをされていますか?
歳入面では企業版ふるさと納税やネーミングライツ・広告事業の拡大に注力したいと考えています。 歳出面では、令和5年度はデジタル窓口などDX化により市民サービス向上と職員の負担軽減に取り組んでいます。 令和3年度に実施した事業見直しでは、コロナをきっかけに多くの事業を見直したのですが、今年度、そこからさらに縮小となると、事業課からすれば「まだ絞れって言うんですか」という気持ちになるでしょうし、見直しの効果が出るのか懸念しています。 事業課からは「一度始めたものを縮小するには相当の理由付けが必要で、ステークホルダーへの説明など労力が大きい」といった声もあがっており、なかなか見直しが進まない現状があります。
 
ステークホルダーの対応は事業を一番よく理解している事業課がやるべきですが、それにはモチベーションが必要です。各事業の評価はどれくらいのレベルで実施しましたか。
まずは課単位で見直しをして、どういう見直しをしたのかを部長に説明する流れになります。 令和3年度は各部に削減目標額を設定し、2部署を除き全て達成することができました。
 
先ほど財調基金というキーワードが出ましたが、事業課は財調基金への意識を持っていますか?
事業課には財政状況や財調基金の残高について危機感を持ってもらえるように話をしますが、あまり気にしていないように感じます。 私も事業課にいるときはそうでしたが…。 実際どうやったら財調基金が増えるのかを、令和4年度決算見込みを例に出して「歳出がこれくらいに圧縮できると財調基金が増えていく」という仕組みを事業課に伝えるつもりですが、なかなか響かないだろうと思っています。
 
同じ立場の職員の言葉では聞いてくれないので、例えば、説明会の冒頭で5分だけでもいいので首長からメッセージを出してもらうのがいいと思います。トップが意識してはっきり伝えることが大事なんです。話は変わって、府中市さんは公共施設の削減にも注力されていますよね。
当市も他自治体と同じく、70~80年代に建てた建物の多くが老朽化しています。 平成28年3月に総合管理計画を策定し、その中で公共施設の床面積のうち40%削減すると目標を立てています。
 
40%削減ですか。それは大きいですね。
ただ、実際は政策的事業として市民プールを建設する計画があるなど、新たな施設整備も行っています。このように予算編成における維持修繕費及び投資的経費が増加傾向にあり、公共施設に係る費用を平準化、削減することが大きな課題となっています。 今は場当たり的に「施設がだめになってからドーンと予算要求する」ということが起きているので、集約や複合化に視点を持たせた個別施設計画をつくりたいと考えています。 「この施設とこの施設は統合する」というレベルまでのものを個別計画の中に組み込めるのが、理想です。
 
ありがとうございました。
 
インタビューと併せて、府中市さんの具体的なお悩みに応える「出張相談」も実施しました。出張相談の内容は財ラボ公式ホームページで紹介していますので、ぜひ、こちらもご覧ください。
 
 
 
今回は、市内にある「VulcaCAFE」さんにご協力いただきました。「靴」×「CAFE」の異色のコラボが織りなす、素敵な空間でした。